どうでもよい店主の片耳難聴の話(聴神経鞘腫)

店主のつぶやき

数年前、突然左耳が聴こえなくなり、原因は脳腫瘍だとわかった。
良性の腫瘍ではあるが放射線治療を受けられる3㎝は超えていて、脳幹や小脳を圧迫している。
結局外科手術を受けることになった。
偶然にもこの「聴神経鞘腫」というものに詳しい先生をご紹介いただくことができ(手術例はまだまだ少ない。なにせ10万人に1人の確率らしいので)、腫瘍はあらかた取っていただいた。

その間に結婚をし、夫とともに大磯町に移住。
兼業茶農家の道を歩み出したのだが、結婚して2年ほど経った頃に腫瘍がまたまた大きく育ってしまった。

再度外科手術となり、2度目の開頭手術。
最初に手術した先生のところに学びにいらしていた(偶然にも私の1回目の手術にも参加されていた)横浜の先生をご紹介いただくことができて、無事に手術は成功。

それから4年ほど経つが今のところ一部残った腫瘍はおとなしくしてくれている。
半年に1回のMRIに通いつつ、頭を開かれることよりなにより術後のせん妄が地獄だったためもう外科手術はこりごりだ。←誰でもそうだと思うが

それでも2回とも無事に手術をしていただくことができ、最悪顔半分の麻痺が残るケースなどもあるのだが後遺症はほぼない。(若干はある)
外科手術は先生も看護師さんも皆さん本当に大変だと思う。
こうしてご縁あって手術いただけて、無事に回復していることを心から感謝している。

という前置きをした上で。

というわけで店主は左耳が不自由だ。
後遺症はほぼない、と書いたが、細かいことはたくさんある。
例えば、左耳は音を聞き取ることは出来ない癖に、なぜかずっと耳鳴りはしている。
これは脳の誤作動らしい。
漢方を試したり、薬を飲んだり、色々してみたが治らない。
最初はストレスで仕方なかった。
でも、まぁ慣れざるを得ない。気にしていたら気が狂いそうなので。

あと、左耳側からの音は当然聴こえない。
ついでに、左からの音が右方向から聞こえたりする。
どこから音がなっているのかわからずにきょろきょろしたりもする。
声をかけられても音の方向が分からず、その場で一周回ってしまうこともある。

畑でよくあるイライラなのだが、蚊の音が聞こえないため左側を刺されても気づかない。
なんかかゆい、と思ったときにはもう遅い。
怖いのはスズメバチなどが左側を飛んでも咄嗟に反応できないので、万が一左側から狙われたら刺されるしかない。
(7年ほど経つが今のところ刺されてないのでセーフ)

私が失聴した頃、丁度「半分、青い。」という朝ドラをやっていて、主人公は片耳難聴だったらしい。(見ていないので詳細不明)
知り合いに片耳失聴してつらいと愚痴をこぼすと決まって「すずめちゃんだって頑張っているから、あなたも前向きに頑張って」と逆にダメージをもらうことが多かった。
私は人一倍ネガティブなのだ。簡単にポジティブになれるかい!と。
そのため、片耳難聴のことを誰かに伝えられなくなった時期もある。

あと、「まだ右耳があるから大丈夫」というのもなんの励ましにもならない。
耳が二つあるのにはちゃんと意味があるのだ。
音の距離を測ったりもできないし、音楽も重厚感を感じられない。
失って初めてわかったので、両耳がある人にわかってほしいというのは無理があることも学んだ。

ざわざわしているところは音が全く聞き取れない。
例えば飲み会の席のような場所は苦行に近い時すらある。
正面の人と距離があれば会話は聞き取れず、右隣りの人の声をかろうじて拾える程度。
みんなが盛り上がっていても置いてけぼりを食らう。
元々酒が飲めないのでまぁいいけれど。

何よりつらいのはこの「微妙なつらさ」を誰にもわかってもらえないことだ。
片耳難聴は「障がい」とも認められない。
接客業が主だったが、それも今は結構しんどい。
仕事から帰ると右耳が「もうなにも聞きたくありません」というくらい疲労する。
そして、一見なんの不自由もなさそうなので皆さん普通に話しかけてくださる。
が、聞き取れなくて何度も聞き直したり、結局聞き取れぬまま微妙な笑顔で終わらせたりする。
左耳に「こちらの耳は聞えません」と札を貼っておきたい気持ちになる。
とんでもなく話がかみ合ってなくて、申し訳なくなる時もある。
人に話しかけるのも躊躇うことが増えた。
話しかけておいて聞き取れなかったらどうしよう、と咄嗟に思うのだ。
落ち込むこともいまだにある。
最近図々しくなってきて、気にしなくなってきたが。
おばさんになってよかったなぁと思う瞬間だ。

長々書いておいて、なにかっていうと、人生いろいろってこと。
一見元気そうに見えても重大な病気を抱えている人もいるし、苦しくてつらくて泣きそうなのを堪えて笑顔でいる人もいる。

表向きだけを見て判断してはダメだなぁと思うことが時折ある。
その人の苦しみをなぜ理解してあげられなかったのかと嘆くときもある。

だが、術後に占いをしている方が私に言った。
「こんなに大変な困難を乗り越えたんだから、これからはいいことしか起こらないよ!」と。

左耳を失ったことで夫と茶畑が手に入ったのだと思っている。
まぁそう考えると案外ポジティブなのかもしれないな、私。

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